首都ティンプーを見渡す丘で、きれいな光の景色を写真に撮りました。丘の中腹に見えるのが前王妃(現国王は2006年戴冠、未婚)の宮殿で、彼女は2003年の戦争で亡くなった、敵兵士を含めたすべての人のために立派な塔を建ててくれた尊敬すべき方なのだと、ガイドのトンジェイは何回も言いました。
その時は何気なく聞いていたのですが、帰りの飛行機で私はまさしく尊敬すべき前王妃を目の当たりにすることになります。
飛行機の最前列に乗った前王妃に、ある日本人老人がドコモダケの縫いぐるみを渡して写真を撮らせろと言い出します。SPは離れて座っていたのですが、彼女と現国王の妹様と通路を挟んで横に座っていた私は、あまりの失礼に日本人として申し訳なく、口の形で王妃に「大変申し訳ありません。」と、お伝えしました。すると王妃は、「かわいいじゃない?」と私に向かって声に出して応えてくださったのです。その後しばらくすると、国王の妹様が前王妃が私を呼んでいると仰いました。私は通路に膝建ちになってお話をさせていただきました。
「あなたは日本の僧侶なの?」「はい、そうです。」「ブータンに何をしに来たの?」「ブータン仏教のエネルギーを感じに来ました。」「知るためではなく、感じるために来たのね。」「その通りでございます。」「それは、素晴らしいことだわ。それで、どうだったの?」 お答えしているなかで、一番強いエネルギーを持った釈迦像がキチュ・ラカンという寺院にあったというと、そこは王家の寺で、つい先日毎年恒例の行事で行ったばかりだと仰いました。
考えてみたら、私たちがキチュ・ラカンに行った日には、飾りがまだ色んな所についていました。そして、そのキチュ・ラカンのお参りを済まして外に出ると、見たこともないようなきれいな虹が谷にかかっていたのでした。
その後、前王妃が数珠をくって何かを祈っていたのを見ていた私は、何を祈っていたのかと聞いてみると、「人々のために祈るのは徳を積むことです。」とお答えになりました。私は「私はあなたが王族であるからではなく、あなたの人柄に心を打たれてたった今ファンになりました。」とお話しすると、「世界の色々なところでエネルギーを感じた後、またブータンに戻っていらっしゃい。」と彼女は言いました。
席に戻って窓の外を見ると、「雷竜の巣」があるとするなら、きっとこんな所だろうと思うような景色が広がっていました。ブータンの国旗は黄色とオレンジで斜めに色分けされた所に雷竜が舞っているものです。ブータン前王妃(ドルジェ・ワンモ・ワンチュック様)は、光の奇蹟を呼ぶ方なのかもしれません。